K二丁目

本の感想と、日常と。

人工知能とは何かを知りたくなったから

 年始に見たニュース、圧倒的な強さを持ったAlphaGoの再来から、少し人工知能に興味を持った。人工知能について適当にインターネットで検索するも、地頭が良くないのだろう、いまいちピンとこず、小難しく感じる文章をそれでもなんとか理解しようとしていたのだが、一方で書籍を探していると、読んでいて楽しく、ワクワクさせる本に出会うことができた。「人工知能は人間を超えるか」という名前だった。

 私のような技術的な知識がゼロの者でも、体系的に、歴史を追いながら、かつ専門的な要点を押さえた内容がつまっていた。著者は日本でも人工知能の第一人者である松尾豊氏で、学生時代から人工知能の研究を行ってきた者だ。本書の中で、人工知能にはブームと冬の時代が交互にあり、一区切りごとに説明がなされている。その時その時の著者の気持ちが垣間見えることが、こういった技術的な書籍でも途中で飽きさせず、ぬくもりを感じさせるものにさせているのかもしれない。すでに私たちの身の周りにはsiriやgoogle検索エンジン人工知能は使われているし、自動運転は今ホットな話題だ。今後医療や会計など様々なモノ、サービス、業界でますます人工知能という技術が使われていくのは明白で、技術的な話題やニュースの後ろには人工知能が関わっていることが増えてくるだろう。そんなときに、専門でなくとも、点ではなく線で理解した状態で俯瞰できるように、本書を読み終えたころにはなっているだろうと思う。

 本書を読むにあたっては予備知識がなくても十分に楽しめたのだが、自分が聞いたことのある言葉、文章が登場するとやはりそれはそれでより楽しくさせる。もともと私が人工知能に興味を抱かせるきっかけとなったAlphaGoの他にも、つながってくるものがあった。一つは、携帯ソーシャルゲームの大手で球団も持つディー・エヌ・エーの記事盗用・無断転載があったことだ。提供するサービスの一つ、医療キュレーションサービスWELQが、情報の信憑性や著作権の侵害を含めかねてより問題視されており、その声が無視できないほど増えてきたことで、昨年12月には関連するほかのキュレーションサービスも含め公開停止に至ってしまった。例えばWELQでは、肩こりや冷え性、などといったワードで検索するとトップに表示されていたが、今ではその姿を消している。これがどう人工知能と関わるのか、ということだが、その前になぜこういったキュレーションサービスが現れたのかというと、端的に儲かるからだ。今や何か知りたいことがあったら検索する(ググる)ことが普通の世の中となった。その際検索結果から人々が閲覧するサイトやブログなどのWEBページはほとんどが1ページ目の、そして上位表示されているページだ。収益の確保は、同ページにある広告から得ており、それはPV(ページビュー;閲覧数)に比例する。つまりは、上位表示されるようなWEBページ、記事を作成することが収益につながり、その方法の一つとしてテクニカルな対策を施すことが業界では当たり前である。この取り組みはSEO(Search Engine Optimization;検索エンジン最適化)と呼ばれている。

 日本も含め、世界でもほとんどがGoogle検索エンジンが使われており、Google検索エンジンでは人工知能が使われている。Googleの目的は、検索者が知りたい情報を速く、適切で、そして新鮮な状態で得られるような検索結果を表示することだが、その人工知能にも穴があり、仕組みを見破られ、結果的にGoogleの意図しないものを上位表示してしまっているのだった。

 こういった問題も、人工知能が今後ますます進化を遂げていけば、解決されるのかもしれない。本書「人工知能は人間を超えるか」では、爆発的進化をするかもしれない領域に、足を踏み入れていると説明している。人工知能の進化には倫理的側面からも消極的な意見があるが、私は「あり方」が変わることは悲観するものではないと思っているし、人工知能の進化とともに人間が進化していくことを妄想すると、口元が少し緩む。