K二丁目

本の感想と、日常と。

プレゼン資料作成のコツを得るために

 少し前に、制度やルールを運用する所属から、それらを改定したり、見直したり、あるいは企画したり、といった業務を担当する所属に異動した。それまでは自らが発案するということは少なく、検討材料を集めて、上に判断を委ねるということがほとんどであった。例年通りの進め方で、上司から要求があったことに対して再調査し、決定していくというプロセスであった。その為、説得しよう、納得させようという思いを込めた資料を作成したことがあまりなかった。しかし、異動後はむしろ逆で、自らが提案し、その提案を通すために、資料作成を含めた積極的な準備の重要度が増していった。限られた時間の中で努力はしているのだが、最終アウトプットにはどこか自信を持てない部分をいつも感じている。入社して数年、今更ではあるが、「外資系コンサルが実践する資料作成の基本」という本で資料作成の基礎を勉強し、能力のレベルアップを期待した。

本書を読むことで

 資料作成の考え方から、パワーポイント、エクセル、ワードそれぞれにおいてのテクニックを学ぶことができる。素早く、そして説得力のある資料を作成する為の注意点やヒントが多く記載されている。これはソフトの使い方だけでなく、実務的なステップの効率化も含まれている。具体的には、資料作成依頼主(上司)とのコミュニケーション不足による手戻りを無くす為の方法だ。そしてこれらをマスターすることで、著者が時間をかけて到達したレベルまで一気に自分を引き上げることができる。と、実際に著者が自らの後輩を指導した経験を元に述べている。ただし、資料作成という技術は英語と同じで、何度も繰り返し行うことで修練度が増すということを忘れてはならない、という注意を促している。

 良かった点は

 何といっても、実践的で有効なノウハウが細かく、網羅的に詰まっているところだろう。資料作成に自信を持っている人でも、それが自己流であれば、本書を読むことで足りない点に気付くだろう。本書のノウハウ「実践できる」というタイトル通り、どれもそのまま使用できる。また、あるいは、それを基本として自分なりのテンプレートやルールを、構成はもちろんフォントまで決めておくことで、体裁の整った資料を素早く作成することができる。基本的な作成ソフトの使い方だとか、書類の体裁についてはもちろん、どの会社、部署でもある程度教育されたり、テンプレートに近いものがあるのは当然だろう。しかし、ここまで丁寧なノウハウを受け継いでいるかというと、そこまでの教育体制が整っている会社は少ないのではないだろうか。少なくとも私の会社では、そこまでの教育はなかった。OJTという名目の教育によって、教えるほうも教えられるほうも、個人によって大きく差が出る。また、同じ部署内であっても、多様な資料を目にすると、個人の性格が出してはいけないところにまで出てきていると感じることもしばしばだ。

これらのノウハウを使いこなすには

 やはり実際に使ってみるという練習が必要不可欠だ。本書で学んだことを、自分が作成する資料に利用する際には慣れるまで時間がかかるだろう。普段作成しないようなものは、そのチャンスがなかなかないため、尚更だ。用途がないのに覚える時間は無駄とも考えられるが、本書に載っているものは基本中の基本だ。目的にそったチャートやグラフを使い分ける際、すでに使える状態にしておきたいものだ。その為、最初は時間を使ってでも、自ら作ってみることが、資料作成が苦手という人にとっては第一歩になるのではないかと思う。著者はコンサル会社に勤めており、自ら提案する案件の資料作成を何度もこなしてきたのであろうが、他の業種、仕事では必ずしもそうではない。